デザインを行う際、引用元というものは慎重に、そして誠実に扱われるべきだと考えている。
すべての空間表現には、必ず参照される背景や文脈が存在し、それをどこから、どの層から引用するのかは、設計者の思想そのものを映し出す。
マリエにおいて引用したのは、西洋建築における原初的なモールディングではない。
それが日本に渡り、時間を経て、純喫茶やスナックといった日常空間の中で様式化され、記憶として定着した姿である。
モールディングはここでは「格式を誇示する装飾」ではなく、
日本的に翻訳され、生活に溶け込んだ空間のアイコンとして扱われている。
一方で、空間全体は装飾的には構成していない。壁や開口部の曲線は極めてシンプルなRとし、同じ曲率で空間を整えながら線の意味を最小限にとどめている。
周囲の意匠を削ぎ落とすことで、装飾は量ではなく、関係性によって立ち上がることを期待した。
ミニマルな構成の中で、カウンターのエッジに施されたモールディングだけが、触覚と視線の交点として静かに浮かび上がる。
装飾を足すデザインではなく、引き算によって装飾を際立たせるための編集的デザインとも言える。
西洋から日本へ、そして現代へ。二度翻訳された意匠を、いまの空間感覚で再編集することで、懐かしさと現在性が同時に存在する、新しいスナックの風景になってくれたら嬉しい。
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